デザイン思考は、クライアントの問題を解決するためにデザイナーが使っている思考法をビジネスに応用したものです。
いまや、イノベーションを起こすための体系的手法としてすっかり定着しました。
①共感、②問題定義、③アイデア出し、④プロトタイプ、⑤テスト、という5つのプロセスがあります。
以前、クライアントの物流企業で、デザイン思考の説明をしたら、体育会系の社長さんが、「要するに、パシリですね」と面白いことを仰っていました。
パシリとは何のことかと聞いたら、大学の体育会系のクラブでは、先輩は気のつく後輩を「パシリ」と呼んで、使用に使いまくるのだそうです。
要するに、「使いっ走り」の略ですね。笑
例えば、先輩が昼飯に何か買ってこいとパシリに命令する。パシリは先輩に何を食べたいですか、と聞き返すと、一言、「セーンス!」と言い返す。
気が利くパシリは日頃から先輩のことをよく観察していて、先輩の好き嫌い、その日の体調、気分を総合的に判断して、先輩が欲しいものを買ってくるそうです。
逆に、気の利かないパシリは、とんでもないものを買ってきて、「何でこんなもの買ってきたんだ。少しは頭使え!」と先輩に怒鳴られることになる。
パシリがやっていることを分析してみると、デザイン思考そのものだということが分かります。
まず、日頃から先輩を観察して、先輩の好き嫌いとか、行動パターンを把握するのは、デザイン思考では、「共感」というプロセスです。
その上で、先輩は、お腹が猛烈に減っていて、濃厚なものをがっつり食べたいのか、それとも、二日酔い気味なので、胃のもたれない消化が良いものを食べたいのか、などと考えるのは、「問題定義」というプロセスです。
その上で、豚カツがいいか、ざる蕎麦がいいかをあれこれ考えるのは、「アイデア出し」というプロセスです。
その中から買い物を決めれば、それが「プロトタイプ」になり、先輩が気に入るかどうかを「テスト」するという流れになります。
この話をイノベーション・ワークショップでしたら、参加者の一人から、今度は、「要するに、藤吉郎ですね」という声が上がりました。
これもデザイン思考の本質を突いた理解です。
言い換えれば、仕事ができると言われる人は誰でもやっているプロセスがデザイン思考とも言えます。
「共感」「問題定義」「アイデア出し」というプロセスはこれまで説明した通りなのですが、「プロトタイプ」というのは、完全に仕上がっていなくても、取り敢えず、出してみるということです。
最近は、よく上司とかクライアントから「取り敢えず、まず、あらあらで出してみて」とか言われるようになりました。
やはり、デザイン思考の考え方が浸透してきたせいでしょうか。
こんな風に考えると、デザイン思考も決して難しくないですよね。まずは、「パシリ」になるところから試してみてください。
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