令和が始まって、2ヶ月経ちました。たった2ヶ月しか経っていないのに、平成の世はもう過去のことのように忘れられようとしています。
経済学者の野口悠紀雄さんが書いた『平成はなぜ失敗したのか』という本があります。僕自身もずっとこの問題を考えてきました。
平成元年に外交官としてニューヨークに赴任した時は、日米経済摩擦の真っ最中で、主な仕事は日本経済は決して閉鎖的ではない、とアメリカ人識者に対して説明することでした。
ところが、その直後にバブルが崩壊してから、不良債権問題を引き金に日本経済は停滞したまま、「空白の30年」を過ごすことになってしまいました。
まさしく、平成は失敗だったのです。
平成はなぜ、失敗したのか?
野口さんは主な理由として次の3つを挙げています。
まず、中国の急激な工業化に対応できなかった。
他国は、中国を世界の工場として位置付け、水平分業の産業構造に転換したが、日本はいつまでの垂直統合にこだわったという分析です。
例えば、Appleは製品のデザインとマーケティングは自社で行いますが、製造は中国に丸投げしました。
対照的に、「世界の亀山工場」とか言って、あくまで日本国内での生産にこだわったシャープは倒産して、鴻海に買収されました。
次に、IT化に乗り遅れた。
これは異論のないところです。アメリカはこの30年にGAFAを成長させましたが、日本には世界に誇れるIT企業は育っていません。
最後に、人口政策で失敗した。
これも全く、その通りです。現在の日本経済が停滞している大きな原因が少子高齢化であることは明らかです。
では、こうした平成の失敗を踏まえて、令和の時代に日本はどうしたら良いのでしょうか?
人口政策については、保育園の無料化に踏み切った他、外国人労働者の実質的解禁に踏み切りました。4月から始まった特定技能制度の出足はモタモタしていますが、いずれ、じわじわ増えてくるでしょう。
IT化については、ITエンジニアの数が少な過ぎます。一説には、日本のITエンジニアは1万5,000人、アメリカが30万人、中国が100万人、インドが300万人だそうです。
これでは話になりません。
そもそも若者の数が少ないので、自力でITエンジニアを育てるのは限界があります。
外国からITエンジニアに来てもらうしかありません。
幸い、トランプ政権が移民を制限しているので、外国人ITエンジニアがアメリカのビザを取りにくくなっています。
また、中国についても、習近平政権の非民主的体質が明らかになるにつれて、就職先としての中国の魅力が落ちています。
日本にとってはチャンスです。
この機を逃さず、積極的に外国からITエンジニアを受け入れるべきでしょう。
最後に中国経済とどう付き合うかです。
これについては、『チャイナ・エコノミー』の「日本語版へのあとがき」の中で、著者のアーサー・クローバーが次のような貴重な助言をしています。
「日本企業は、中国の需要パターンの変化についていくことだ。
中国は建設やインフラや重工業への投資が牽引する成長モデルから、中間層の消費者による需要が牽引する成長モデルへシフトしていく。
年間所得2万ドル以上の世帯の支出パターンに注意を払う企業は成功するだろう。
反対に、この層が好む流行についていけない企業は遅れを取るだろう。」
令和を成功の時代とするには、政府の政策も重要ですが、個々の企業の情報感度と戦略も重要だということです。
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