top of page

日米関税交渉の妥結が「忘れられたアメリカ人」を復活させる!


ホワイトハウスにおけるトランプ大統領と赤沢大臣との協議の模様
ホワイトハウスにおけるトランプ大統領と赤沢大臣との協議の模様

日米間で続いていた関税交渉がようやく妥結した。自動車やエネルギーインフラを中心としたこの妥結は、単なる貿易問題の解決を超え、米国内で深刻化する「忘れられたアメリカ人(Forgotten Americans)」を蘇らせるきっかけになる可能性がある。


「忘れられたアメリカ人」とは、2016年の大統領選挙でドナルド・トランプが取り上げた言葉であり、グローバル化や製造業の空洞化で職を失い、経済的な恩恵を受けられなくなった労働者階層を指す。今回の日米交渉の妥結は、彼らに再び希望をもたらすだろう。


日本企業による米国製造業への投資加速


今回の妥結を受け、日本製鉄によるUSスティールの買収が象徴するように、日本企業のアメリカへの投資が一層加速すると予測される。トヨタは米国で約18万人分(直接雇用と関連雇用)の雇用を創出し、ホンダも米国内12カ所の製造拠点で3万人以上を直接雇用してきた。これらの企業の成功を追いかけるように、今後さらに多くの日本企業が米国での事業を拡大し、地域経済の活性化に貢献することになる。


日本企業が持つ「人を育てる」経営哲学


日本企業がアメリカで成功を収めている最大の理由は、現場レベルでの徹底した人材育成と教育である。アメリカ企業のエリート層は、業績が出ない従業員を簡単に切り捨てる傾向があるが、日本企業は逆に「仕事ができない人には、その人に合った仕事を作り出す」文化を持つ。


私自身、ウォール・ストリートの法律事務所で勤務していた際に、「使えない」と判断された弁護士に対して6ヵ月間一切仕事を振らないことで、自主的に退職に追い込むという場面を何度も目の当たりにした。このような非情ともいえる文化は、日本企業の「人を育てる」経営哲学とは対極にあり、それこそが日本企業が米国で成功する大きな要因の一つだと考えている。


また、日本企業が米国に導入した「カイゼン」は、米国企業でも広く導入され、現場で働くアメリカ人労働者の技能と生産性の向上に寄与している。例えば、トヨタのケンタッキー工場は、「トヨタ流」の人材育成と工程管理で世界的に高い生産効率を実現している。


「忘れられたアメリカ人」の復活への道筋


日本企業の投資によって、特に米国のラストベルト(錆びついた工業地帯)などで深刻な失業や貧困に苦しむ労働者に、新たな職場と職業訓練の機会が提供される。これは単なる経済問題を超え、社会的安定の回復や、米国内における分断の解消にもつながる。


トヨタが進出したケンタッキー州やホンダの工場があるオハイオ州など、日本企業が工場を構える地域は安定した雇用と経済的成長を経験している。このように、米国社会の安定化に寄与する日本企業の役割は、日米の経済的パートナーシップをさらに強化し、両国関係を新たな次元に導くだろう。


今回の妥結は、日本をアメリカにとって欠かせないパートナーとしての地位へと押し上げる大きな一歩となるだろう。


 
 
 

Comments


@2023 by Zen Vision Lab Inc.

bottom of page