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Writer's pictureBundo Takagi

ウクライナ問題は対岸の火事ではない

Updated: Mar 14, 2022


ロシアのウクライナ侵攻は、日本にとって対岸の火事ではない。原油価格の高騰による経済への影響にとどまらず、中国の台湾侵攻の可能性を高めるなど日本の安全保障を左右する危機である。次の4点に絞って、考えてみよう。



無力な国連


国際法上、戦争は違法である。安保理が侵略を認定すれば、国連加盟国は侵略国に対して軍事制裁を行うのが国連の建前である。1990年にイラクがクウェートを侵攻したときは、多国籍軍の編成という形で曲がりなりにも国連が機能した。


しかし、今回は拒否権を持つ安保理常任理事国のロシアが侵略しているので、安保理が侵略を認定できない。結果的に、国連として軍事制裁を発動できない。


中国が台湾を侵攻した場合も、中国は当然、拒否権を発動するであろうから、国連は何もできないことになる。


頼りない米国


アフガニスタンからの撤退に続いて、ウクライナに軍事介入しないことをバイデン政権は明確にした。


自国がロシアに侵略されても米国は軍事介入しないのではないかと恐れるNATO加盟国に対して、その場合は米国は躊躇することなく同盟国は守るとブリンケン国務長官は躍起になっているが、日本を含めた同盟国の疑心暗鬼は拭えない。


なぜなら、バイデン大統領は、ウクライナに介入しない理由として、ロシアと第三次世界大戦を引き起こす恐れを挙げているからだ。


今や、中国はロシアよりも軍事大国である。中国が台湾を侵攻した場合、台湾と同盟関係にない米国が、中国と第三次世界大戦を引き起こすリスクを起こしてまで、軍事介入するだろうか。


新しい冷戦


今回、中国がロシア側についたことで、民主主義陣営vs. 権威主義陣営という形で世界が分断された。民主主義陣営がロシアに経済制裁を課し、中国がロシアを政治的、経済的に支えるという構図になっている。


ロシアに対する経済制裁は、いまや、民主主義陣営が勝つか、権威主義陣営が勝つかという分水嶺になりつつある。民主主義陣営の狙いは、経済制裁によりプーチンを失脚させ、中国を孤立化させることである。


1989年の冷戦崩壊以後、グローバル化に向かって進んできた世界は、民主主義陣営vs. 権威主義陣営という形で経済のデカップリング(分断)が起こるだろう。日本は民主主義陣営につかざるを得ないので、中国経済とのデカップリングという難しい局面を迎えることになる。


日本の防衛力強化と核武装


今回、国連の無力さ、米国の頼りなさが明らかになったことで、日本もいよいよ防衛力強化に踏み出さざるを得なくなる。もちろん、独立路線を歩むという形ではなく、あくまで日米同盟の強化・深化という形で進んでいく。


同時に、日本の核武装の可能性も表立って、議論されるようになろう。すでに、安倍元首相が「核の共有」という一石を投じた。まずは、非核三原則の「核を持ち込ませず」という一角を崩し、その後、「核を持たず」まで踏み込んでいくのだろう。

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